木村知貴さん×大西諒さん

 

インディペンデント映画の登竜門、田辺・弁慶映画祭とTAMA NEW WAVEでグランプリを獲得。
主演の木村知貴は俳優賞スペシャルメンション、
ベスト男優賞を受賞し高い評価を受けた映画『はこぶね』。
当初は短編映画として企画されていた本作。
それがどのように長編化され、完成への道を辿ったのか。
主演の木村知貴さん、大西諒監督に聞いた。


木村さんから言われて、初めてその先を考えました

―――『はこぶね』の発想はどこから生まれたのですか?
大西「伊藤亜紗さんの『目の見えない人は世界をどう見ているのか』という本を読んだことがきっかけとなりました。伊藤さんが視覚障害を持った方に、相手の体が世界をどう捉えているのかなど好奇心旺盛に話を聞いていくんです。読んでいて面白かったし、僕も興味があるところでした」
――そこからどのように物語に繋がっていったのですか?
大西「とある家族が子供に『チョコレートは体に悪い』と嘘を教えて欲しがらせないようにしているという記事をどこかで読んで、ちょっと人間くさくて面白いなと思ったんです。そのエピソードと視覚障害を持った人物があわさって、映画の冒頭に出てくる叔母が落花生をごまかすというシチュエーションが思い浮かびました。二人の関係性が面白いなと思って、そこからどんどん広がっていきました。僕は物語を考えるというより、こういう場所があって、こういう人がいますと考えていくのが好きなんです」
――人物の関係性によって話が生まれていく?
大西「そうですね。そこから話が進みそうだとなれば、あとは人物が動いていくみたいな感じです」
――木村さんは、どのような経緯で出演することになったのですか?
木村「ネットでキャスト募集の告知を見つけて、あがっていた脚本を読んだら面白かったので、応募したんです」
大西「最初は短編の企画で、映画祭に出そうと思っていたんです。僕は木村さんの出ている作品を観ていたし、できあがった脚本には満足していましたけど、本当に小規模の作品だったので応募していただいていると知ったときは驚きました」
――短編はどのような内容だったのですか?
大西「『はこぶね』の序盤、バス停で西村と大畑が再会して会話するところまででした」
木村「余韻を残しつつ、良いまとまり方をしていたんです。でも、僕はその先を観たいと思いました。オーディションの日の夜に大西監督から『今日はありがとうございました』という長文のメールが来たんです。受かってもなかったから、もしかしたらこれが最後の返信になるかもしれないと思って『これを長編で見たいなと思いました』と伝えました。その後、出演することが決まったのですが、コロナ禍になっていて、完成させたとしても出品できる映画祭がなさそうでした。その状況がいつまで続くか分からない感じだったので、だったらその期間を使って長編化しませんかみたいな話をしたんです」
――短編から長編になる過程での木村さんの関わり方は?
木村「基本は監督が改訂してきた脚本を僕が読んで、セリフをもう少しこうしたいな、という風に戻して」
大西「書き直した脚本を見てもらうみたいな感じでした」
――大西さんの中に、短編より先の展開の構想はあったのですか?
大西「木村さんから言われて、初めてその先を考えました。個人的には短編の終わり方が気持ちよかったので嫌だなと(笑)。良くなるかどうかわからないじゃないですか」
木村「一回、心が折れて『やっぱり短編にしたいです』となったときもあったもんね(笑)」
大西「ありましたね(笑)。でも、改訂したシナリオを読んでもらって、よりよくなりましたねと言ってもらえたので、長編化しようと思えました」

木村知貴さん×大西諒さん

――西村という役をどのようにつくりあげていったのでしょうか?
木村「監督と視覚障害者支援センターにお邪魔して、いろいろお話を伺いました」
大西「中途視覚障害者の方でも、個人によって見え方、もののとらえ方、白杖の使い方が違うんです。木村さんとは、西村を視覚障害を持っている方の代表者として描くのではなくて、あくまで西村という人間がどう感じているのかを大事にしましょうという話をしました」
――演じる上では、どのような難しさがありましたか?
木村「演じているときに黒目を動かさないように意識しました」
大西「そうなんですね、いま初めて聞きました」
――どの部分の表現が一番大きくなるのですか?
木村「多分、表情は変わっていないのですが、なにか伝わるものがあると思うんです。能面もそうですが、些細な心の動きというか、そういうのが伝わればと思って演じていました。監督が撮り方や編集など、色々な組み合わせで見せてくれたと思います」
大西「バス停で、ドアップで斜め下から撮っているシーンがあるんです。木村さんは意図してやったわけではないと言っていたのですが、「目の色が変わるとは、こういうことを言うのかな」と、編集をしているときに感じました。役にずっと入り込んでいるからこそ、体が勝手に反応しているみたいな。何かを想像しているように見えましたね」
木村「僕自身は演じている方なので、まだ客観的に見れないんですけども、何かが映ってたらいいなと思います」
大西「最初にサングラスをかけますか?という話をしたんです。でも、木村さんは嫌だと」
木村「役者は目で表現できることが7割ぐらいあると思っているので。それにコロナもあったので、マスクをつけて演じることも考えていて、マスクとサングラスではさすがに見ている人も『誰だよ?』となると思ったんです(笑)」
大西「(笑)」

木村知貴さん×大西諒さん

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